注文住宅は年収の何倍が目安?住宅ローンや頭金の考え方を解説
マイホームの価格は家族構成やエリアで大きく変わりますが、プラン内容が自由な注文住宅は特に費用の幅が広く、いくらぐらいかけるべきなのか判断が難しいところです。
予算の範囲内で理想の注文住宅を建てるためには、年収から無理のない資金計画を立てることが大切になります。
今回は年収とマイホーム予算のバランスについて、平均的な相場や住宅ローン計画など、さまざまな角度で掘り下げてみましょう。
目次
注文住宅を建てた人の平均年収はいくら?
まずは、実際に注文住宅を建てた方のデータから、平均年収がどれくらいなのかピックアップしてご紹介します。
注文住宅を建てた方全体の平均、年齢別の平均年収をそれぞれチェックしてみましょう。
注文住宅一次取得者の平均年収は808万円
国土交通省の調査によると、初めて注文住宅を建てた一次取得者の全国平均世帯年収は808万円、三大都市圏の平均年収は924万円でした。
全国の価格帯別の割合は600~800万円が25.8%で最も多く、400~600万円の22.9%と合わせて半数近くを占めています。
しかし年収が400万円未満で注文住宅を建てる方も8.3%おり、平均に届かなくてもマイホームは購入できることが分かります。
一方、東京・大阪・名古屋の三大都市圏は、800~1,000万円の価格帯が25.1%で最も多く、やや必要になる年収も高い傾向があるようです。
年齢別の世帯年収
注文住宅一次取得者の全国平均世帯年収を世帯主の年齢別に見ると、40歳未満は746万円、40~50代は940万円台と300万円近い開きがあります。
価格帯別に見ると、40歳未満は平均年収400~600万円が28.9%で最も多くなっています。
一方、40~50代は平均年収600~800万円が30%以上と多いです。
子育てが終わり夫婦2人暮らしになることが多い60歳以上は、平均年収400万以下で注文住宅を建てる方が多いようです。
注文住宅購入額は年収の何倍が目安?
マイホーム購入額と年収の比率をあらわす「年収倍率」も、予算を考える際によく使われる指標の一つです。
仮に年収500万円の人が3,000万円のマイホームを購入した場合、年収倍率は3,000万円÷500万円=6倍になります。
世帯年収 | 建設費 | 年収倍率 | |
---|---|---|---|
全国 | 629.1万円 | 3,861.1万円 | 約6.13倍 |
三大都市圏 | 648.2万円 | 4,109.7万円 | 約6.34倍 |
首都圏 | 665.1万円 | 4,190.2万円 | 約6.30倍 |
※2023年度フラット35利用者調査の注文住宅のデータを抜粋
上記は、2023年に住宅ローンのフラット35を利用して注文住宅を建てた方の年収倍率データです。
全国平均は約6.13倍、建設費が高い三大都市圏や首都圏は若干年収倍率が高い傾向があるようです。
世帯年収 | 建設費+土地取得費 | 年収倍率 | |
---|---|---|---|
全国 | 704.1万円 | 4,903.4万円 | 約6.96倍 |
三大都市圏 | 748.9万円 | 5,378.7万円 | 約7.18倍 |
首都圏 | 785.3万円 | 5,679.6万円 | 約7.23倍 |
※2023年度フラット35利用者調査の土地付注文住宅のデータを抜粋
注文住宅+土地を含めた場合、年収倍率は7倍前後となっています。土地購入費用が加わる分年収倍率が高くなりますね。
世の中の平均を見ると、年収の6~7倍前後の費用で注文住宅を建てる方が多い結果になりました。
ただし年収が同じでも家族構成やライフスタイルで支出は変わるため、年収倍率だけでマイホームの購入価格を決めるのはおすすめできません。
同じ600万円の世帯年収でも、夫婦ふたり暮らしと4人家族では生活費などが大きく変わるはずです。
年収倍率は一つの目安として、マイホーム計画の初期段階で予算を考えるのに活用してみてください。
住宅ローンを組む際は返済負担率もチェック
年収と住宅ローン年間返済額の比率をあらわす「返済負担率」も、注文住宅の予算決めで確認すべき指標の一つです。
仮に年収500万円で毎月のローン返済額が10万円の場合(年間返済額が120万円の場合)、120万円÷500万円=24%が返済負担率となります。
返済負担率は住宅ローン審査でほとんどの金融機関がチェックするポイントで、年収によっても変わりますが30~35%が限度と言われています。
ただしこの数字は借りることができる上限であり、無理なく返せる目安ではないことに注意しましょう。
一般的に無理のない返済負担率は20~25%が目安と言われています。
※年収500万円:返済負担率と返済額の変化
返済負担率 | 年間返済額 | 月間返済額 |
---|---|---|
20% | 100万円 | 約8.33万円 |
25% | 125万円 | 約10.41万円 |
30% | 150万円 | 約12.5万円 |
35% | 175万円 | 約14.85万円 |
年収500万円の場合月収は約41万円、上手くやりくりすれば35%でも問題なく返済できるかもしれません。
しかし病気やケガ、転職など予期せぬトラブルで収入が減ったときのリスクは大きくなります。
またお子さんの進学や老後資金の貯蓄なども考えると、もう少し余裕が欲しいところですね。
返済負担率は日々の生活に直結する要素なので、返済期間とのバランスを上手に取りましょう。
【年収別】注文住宅の住宅ローンシミュレーション
年収から注文住宅の資金計画を立てる際は、返済比率で住宅ローンの月返済額を計算し、借入額をシミュレーションすると分かりやすいです。
次の条件で、年収別にどれくらい住宅ローンを借りることができ、どんな注文住宅を建てられるのか考えてみましょう。
※条件
- 全期間固定金利1.5%
- 返済負担率25%
- ボーナス返済なし
- 元利均等返済
- 返済期間35年間
年収 | 月返済額 | 借入金額/総返済額 |
---|---|---|
200万円 | 41,641円 | 1,360万円/1,748万円 |
300万円 | 62,767円 | 2,050万円/2,636万円 |
400万円 | 82,975円 | 2,710万円/3,484万円 |
500万円 | 103,796円 | 3,390万円/4,359万円 |
600万円 | 124,923円 | 4,080万円/5,246万円 |
700万円 | 144,825円 | 4,730万円/6,082万円 |
800万円 | 160,440円 | 5,420万円/6,969万円 |
900万円 | 186,772円 | 6,100万円/7,844万円 |
1,000万円 | 208,174円 | 6,796万円/8,743万円 |
最長35年・返済比率25%・固定金利1.5%でシミュレーションした場合、年収別の住宅ローン借入額と返済額は上記のようになります。
借入金額が注文住宅にかけられる金額で、総返済額は利息を含めた実際に支払う金額です。
それぞれの年収でどのような注文住宅を建てられるのかチェックしていきましょう。
年収200万円で建てられる注文住宅
年収 | 月返済額 | 借入金額/総返済額 |
---|---|---|
200万円 | 41,641円 | 1,360万円/1,748万円 |
年収200万円のシミュレーションだと借入金額は1,360万円になるため、土地込みで注文住宅を建てるのはかなり厳しいです。
すでに土地をお持ちの方でも、付帯工事費や諸費用を考えると建物の本体価格は1,000万円以下に抑える必要があるため、かなりコンパクトな注文住宅に限られます。
年収300~400万円で建てられる注文住宅
年収 | 月返済額 | 借入金額/総返済額 |
---|---|---|
300万円 | 62,767円 | 2,050万円/2,636万円 |
400万円 | 82,975円 | 2,710万円/3,484万円 |
年収300~400万円のシミュレーションは、借入金額2,050~2,710万円になります。
土地取得費用が1,000~1,500万円前後と想定すると、建物にかけられる費用は1,000~2,000万円前後が目安になりそうです。
1,000~2,000万円で建てられる注文住宅のイメージはこちらのコラムで確認してみてください。
年収500~700万円で建てられる注文住宅
年収 | 月返済額 | 借入金額/総返済額 |
---|---|---|
500万円 | 103,796円 | 3,390万円/4,359万円 |
600万円 | 124,923円 | 4,080万円/5,246万円 |
700万円 | 144,825円 | 4,730万円/6,082万円 |
年収500~700万円だと、借入金額のシミュレーションは3,390~4,730万円になります。
土地取得費用を考えると、建物にかけられる費用の目安は2,500~3,000万円前後が相場です。
2,500~3,000万円の注文住宅のイメージは、こちらのコラムでチェックしてみてください。
年収800~1,000万円で建てられる注文住宅
年収 | 月返済額 | 借入金額/総返済額 |
---|---|---|
800万円 | 160,440円 | 5,420万円/6,969万円 |
900万円 | 186,772円 | 6,100万円/7,844万円 |
1,000万円 | 208,174円 | 6,796万円/8,743万円 |
年収800万円から1,000万円のシミュレーションだと、借入金額は5,420~6,796万円となりました。
建物にかけられる費用の目安は4,000万円~で、延床面積にもよりますが住まいづくりの選択肢が広がってきます。
年収800万円でも借入金額が5,000万円を超えるので、土地込みで注文住宅を建てる場合でもエリアや間取りの選択肢が広くなりそうです。
こちらのコラムで4,000万円台の注文住宅の実例や、土地込み5,000万円台の家づくりにについて解説しています。
注文住宅に頭金はどれくらい必要?
注文住宅の資金計画では、年収と頭金のバランスを考えることも大切です。
先ほど挙げたフラット35利用者調査・住宅市場動向調査から、頭金の平均額をピックアップしてみましょう。
データ | 建築費用 | 頭金 |
---|---|---|
フラット35利用者調査 | 3,861万円 | 699万円 |
住宅市場動向調査 | 4,034万円 | 1,070万円 |
出典:2023年度フラット35利用者調査 令和5年度住宅市場動向調査
2つの調査で多少の差はありますが、700~1,000万円前後の頭金を用意している方が多いようです。
建築費用に対する頭金の割合は約18~26%前後です。
頭金を多く入れると借入金額が減り住宅ローンの審査が通りやすくなりますが、入れすぎると手持ちの現金が減り突発的な出費に対応するのが難しくなります。
こちらのコラムで注文住宅の頭金の考え方について詳しく解説しています。
注文住宅の資金計画で考えるべきポイント
実際に注文住宅の資金計画を立てるときは、年収以外にも考えるべきポイントが複数あります。
無理のない資金計画を立てるために、次のポイントを1つずつチェックしていきましょう。
住宅ローンに含められない諸経費
注文住宅の建築では、本体工事費以外に現金で支払うべき諸経費も発生します。
例えば土地や建物の登記費用、住宅ローン手数料など、建物の引渡し前に現金が必要になる費用は複数あります。
こうした諸経費の存在を把握しておかないと、急にお金が必要になって慌てることに・・・。
建物本体以外にかかる諸経費も一つずつ確認して、貯金から支出するのか、つなぎ融資などを利用するのか計画を立てましょう。
完済時年齢
マイホームの住宅ローンを組む際は、現在の年収だけでなく完済時年齢も考慮する必要があります。
多くの金融機関で完済時年齢は80歳前後に設定されていますが、定年以降は年収が減るケースがほとんどなので、申込時の金銭感覚で資金計画を立てると返済が苦しくなる恐れがあります。
例えば40歳で3,000万円・35年ローンを組むと、毎月返済額9.2万円・完済時年齢75歳となります。
65歳の定年までは無理なく返済できても、収入が大きく減る可能性がある10年間を考えると少し不安ですよね。
このようなケースでは返済期間の短縮や繰り上げ返済なども検討しながら、無理のない計画を立てるべきでしょう。
世帯年収の変動
注文住宅の住宅ローンは返済期間が長くなるため、ライフスタイルの変化による世帯年収の変動も踏まえて考えることが大切です。
例えば、共働きのご家庭では、お子さまが生まれたときの産休や子育てによる収入減少が考えられます。
注文住宅を建てるときの世帯年収で返済計画を立ててしまうと、お子さまが生まれたときに家計が厳しくなってしまう可能性があるのです。
また、転職や起業などで一時的に年収が減るケースなども考えられます。
住宅ローンを完済するまでの期間のライフプランを考え、世帯年収が変動しても無理なく返済できる計画を立てましょう。
住宅ローンの金利タイプ
住宅ローンには複数の金利タイプがあり、どれを選ぶかによって毎月の返済額も変わります。
※住宅ローンの金利タイプ
- 全期間固定金利
- 変動金利
- 期間選択固定金利(ミックス型)
住宅ローンの金利タイプは大きく分けると上記の3種類です。
全期間固定金利は返済期間中は金利が変わらず、借入の時点で総返済額が確定するため安定した資金計画を立てられます。
変動金利は返済期間中も金利が変動し、返済額が増えるリスクもあります。しかし、固定金利より金利が低い傾向があり、大幅な変動が無ければ返済額を抑えられるのが魅力。
固定金利と変動金利を組み合わせたミックス型もあり、金利状況に合わせてプランを選ぶことも可能です。
金利タイプを含めた注文住宅の住宅ローンの基礎知識をこちらのコラムでまとめています。
まとめ
マイホームの価格と年収のバランスは、理想の住まいとライフスタイルを実現するためにしっかり考える必要があります。
特に注文住宅はプラン内容によって費用が大きく変動するため、年収から無理のない住宅ローン返済額を考えることが大切です。
年収倍率・返済負担率などの指標を目安にしつつ、総合的な判断で無理のない資金計画を立てましょう。
マイホームの資金計画についてお悩みの方は、住まいづくりの専門家であるハウスメーカーに相談するのがおすすめです。
住宅ローン計画も住まいづくりの一部ですから、お客様の年収や理想のマイホーム像に合わせたアドバイスをしてくれるはずです。
クレバリーホームも注文住宅のご予算についてご相談いただけますので、ぜひお近くのモデルハウスでお声かけください。