擁壁とは?擁壁のある土地選びで注意すべきポイントや工事費用相場を解説

擁壁とは?擁壁のある土地選びで注意すべきポイントや工事費用相場を解説

この記事では、擁壁のある土地を選ぶときに注意すべきポイントや、やり直し工事にかかる費用相場について解説します。

擁壁のある土地は、新築住宅を建てる際に制限が出たり、追加費用がかかったりする可能性があります。

また、擁壁は土地の所有者に管理責任があり、万が一崩壊して周囲に被害をもたらした場合、賠償責任を問われるリスクも。

しかし、擁壁のある土地は相場より安く販売されていることが多く、リスクのある擁壁を見極めて回避できれば、費用を抑えてマイホームを建てられるなどメリットもあります。

今回は擁壁のある土地を検討する際に必要な基礎知識を分かりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

擁壁とは?

擁壁のある宅地

擁壁とは、高低差のある土地の崩落を防ぐための壁状の建築物のことです。

擁壁が地盤の土圧を支えて、土地が崩壊するのを防ぐ役割を持っています。

一定の条件の土地では、法律で擁壁の設置が義務付けられています。

 

※擁壁に関する法律

 

建築基準法ではがけ崩れの恐れがある土地の建築物に対し、擁壁の設置を義務付けています。

また、宅地造成によりがけ崩れや土砂災害が起こる可能性がある地域は、宅地造成等規制法によって擁壁の設置要件が定められているケースも。

がけ条例は一定の高さや角度を超える崖に対して擁壁の設置をすることが定められていて、内容は自治体によって異なります。

擁壁は土地の所有者に管理責任があり、メンテナンスや補強、つくり直しなどをして崩壊を防ぐ義務があります。

万が一擁壁が崩壊した場合、自宅にダメージを負うだけでなく、周囲に被害を及ぼした際は賠償責任を問われるケースもあり注意が必要です。

擁壁とコンクリートブロックの違い

コンクリートブロックの土留め

壁状の擁壁とコンクリートブロックは見た目は似ているものの、役割が異なるため混同しないように注意が必要です。

前述したように擁壁は土地の崩壊を防ぐための土留めとしての役割を持っていますが、コンクリートブロックは敷地の境界を明確にし、仕切るのが主な役割です。

高低差の低い土地では土留めの代わりにコンクリートブロックを使っていることもありますが、擁壁の代わりとしては使えません。

建築基準法の施行以前にはコンクリートブロックの擁壁もつくられていましたが、現行の基準を満たさないため不適格擁壁として扱われます。

擁壁の種類と耐用年数

擁壁にはいくつかの種類があり、構造によって見た目や耐用年数も異なります。

一般的な住宅地で見られることが多い擁壁の種類ごとに、特徴や耐用年数をチェックしてみましょう。

鉄筋コンクリート造擁壁

鉄筋コンクリート造擁壁

鉄筋とコンクリートを組み合わせてつくられた擁壁は、住宅地でも見かけることが多い構造で、耐用年数の目安は30~50年前後と言われています。

現場で型枠をつくって生コンクリートを流し込むRC工法(Reinforced Concrete Construction)、工場で生産したコンクリートパネルを組み立てるPC工法(Precast Concrete)の2種類があります。

鉄筋コンクリート造擁壁は表面が平らで垂直になっているため、土地を最大限有効活用できるのがメリットです。

間知ブロック擁壁

間知ブロック擁壁

コンクリート製の間知ブロックを積み上げてつくる擁壁も、住宅地で採用されることが多い構造です。練積ブロック擁壁と呼ばれることもあり、耐用年数の目安は30~50年前後と言われています。

一定の大きさのブロックが並んだ見た目をしていて、斜めにつくられているのが間知ブロック擁壁の特徴です。

前述した鉄筋コンクリート造擁壁よりコストを抑えやすいのがメリットですが、斜めにつくるため活用できる土地の範囲は狭くなります。

大谷石擁壁

大谷石擁壁

天然の大谷石を積み上げてつくる擁壁は、造成された時期が古い住宅地などで見られることが多く、現在は採用されることはほとんどありません。

耐用年数の目安は20~30年前後と短めで、現行の建築基準法をクリアしていないため、新築住宅を建てる際はつくり直しが必要になります。

大谷石は吸水性が高く表面が風化しやすいため崩壊リスクも高く、年数が経つと汚れや苔が気になるケースも多いです。

空石積み擁壁

空石積擁壁

自然石を積み上げただけでつくられている空石積み擁壁は、古い土地で見かけることが多く、建築基準法を満たしていない不適格擁壁になります。

耐用年数は石の大きさやつくられたときの技術力によって変わりますが、コンクリートなどで固められていないため崩壊リスクが高いです。

新築住宅を建てる場合はつくり直しが必要になるため、後述する工事費用が別途かかります。

擁壁のある土地選びで注意すべきポイント

大きな擁壁のある土地

実際に擁壁のある土地を選ぶ際、注意すべきポイントをまとめました。

不適格擁壁ではないか?

擁壁のある土地を選ぶ際は、まず現行の建築基準法をクリアしているかどうかの確認が必要です。

前述した大谷石擁壁や空石積み擁壁など、建築基準法の施行以前につくられた擁壁は「不適格擁壁」と呼ばれ、さまざまなリスクがあります。

 

不適格擁壁の例

引用元:国土交通省 宅地擁壁について

 

また、継ぎ足しされている増し積み擁壁や大きく張り出した擁壁などはバランスが悪く、大雨や地震などによる倒壊リスクが高いため注意が必要です。

不適格擁壁自体は違法ではありませんが、注文住宅を新築する場合は審査の対象となるため建築確認申請が通りません。

不適格擁壁のある土地に家を建てる場合、補強やつくり直しのために余計な費用がかかってしまうのです。

建築基準法に適合した擁壁かどうかは、検査済証の有無で確認できます。不動産会社や市役所の窓口などで確認しましょう。

隣地との境界トラブルリスクはないか?

擁壁のある土地の境界

擁壁は隣地との境につくられていることが多いため、境界線の位置や所有権も事前にチェックすべき重要なポイントです。

例えば、境界を示す杭や標識などが紛失している場合、境界線の位置をめぐって隣の敷地の所有者とトラブルになるリスクが高いです。

また、境界線の上に擁壁がつくられていて、隣の敷地所有者と共有の場合は、補修やつくり直しの際に費用で揉めるケースもあります。

土地を内見する際に境界線をチェックしたり、所有権について確認したりして、トラブルを未然に防ぎましょう。

劣化や不具合はないか?

間知ブロックがずれている劣化した擁壁

建築基準法に適合した擁壁でも、年数による劣化や不具合がある場合は注意が必要です。

 

※擁壁の劣化や不具合の例

  • ブロックのずれ
  • ひび割れや膨らみ
  • 水抜き穴の詰まりや数の不足

 

前述したように擁壁には耐用年数があり、年数が経って寿命が近づくと上記のようなサインが見られます。

新築や建て替え時に問題がなくても、数年後つくり直しが必要になると、余計な費用がかかってしまいます。

擁壁の表面や全体のバランスなどを確認して、明らかな劣化や不具合がないかチェックしましょう。

理想の住まいを建てられるか?

擁壁のある土地は家を建てられる範囲が制限されるケースもあるため、理想の住まいを建てられるかという視点のチェックも必要です。

例えば、一定の高さや傾斜を超える擁壁は、安全性を確保するために決められた範囲内には建物をつくれない可能性があります。

家を建てられない範囲は擁壁の状況や条例などによって異なるため、確認せずに土地を購入すると、思ったような間取りや広さのマイホームを建てられない可能性があるのです。

法律面のチェックは一般の方では難しいため、擁壁のある土地を検討する際は、住宅のプロと一緒に間取りづくりを同時進行するのが理想的です。

地盤改良の必要はあるか?

造成によってつくられた土地に擁壁がある場合、地盤改良の必要性についても確認が必要です。

傾斜地の造成には切土・盛土の2種類があります。

盛土の場合は地盤がしっかり押し固められていないと弱い可能性があり、家を建てる際に地盤改良が必要になる可能性があります。

地盤改良は土地の状況によって内容が異なり、新築住宅の費用増加の原因になるため事前確認が必要です。

土砂災害のリスクはないか?

擁壁のある土地全体が傾斜地の場合は、土砂災害のリスクについても注意が必要です。

大規模な造成宅地はエリア全体が傾斜地になっていて、大雨や台風の際に土砂災害が発生するリスクがあります。

仮に擁壁自体に問題がなくても、土砂災害が発生すれば建物が被害を受ける可能性が考えられます。

土地自体の土砂災害リスクは、ハザードマップで確認するのがおすすめです。

マップ上で土砂災害リスクが高い場所を確認できるため、検討している土地をチェックしてみましょう。

参考:国土交通省 ハザードマップポータルサイト

暮らしの不便はないか?

傾斜地に擁壁のある土地がある場合、坂道による普段の暮らしの不便がないか確認することも大切です。

普段車移動がメインなら坂道も不便になりませんが、歩きや自転車だと上り坂が大変で実際に暮らし始めてから後悔する可能性があります。

特に、自転車にお子さまを乗せて送り迎えしたり、歩きで買い物に行ったりする可能性がある場合は注意が必要です。

スーパーや病院、幼稚園や学校などの周辺環境も踏まえて、実際の暮らしをリアルにシミュレーションして不便がないか確認しましょう。

擁壁工事の費用相場

擁壁のやり直し工事

劣化が進み寿命が短い擁壁や不適格擁壁のある土地に新築住宅を建てる場合、やり直しのための工事費用がかかります。

擁壁の工事費用は構造や規模、周囲の状況などにより変動しますが、建造工事だけで1㎡あたり10万円前後が相場と言われています。

参照:一般社団法人日本擁壁保証協会

 

仮に高さ2メートル、幅10メートルの擁壁をつくり直す場合、建造だけで200万円の費用がかかるということです。

さらに、既存擁壁の解体撤去費用、建築確認申請費用などもかかるため、マイホームの新築費用以外の資金を用意しておく必要があります。

また、自治体によっては擁壁のつくり直しを対象とした補助金制度を用意していることもあるため、積極的に活用しましょう。

擁壁のつくり直しに使える補助金制度の例をピックアップしてみました。

 

自治体/補助金名 補助金額
東京都港区/がけ・擁壁改修工事等支援事業
  • 工事費用の2/3以内
  • 土砂災害(特別)警戒区域内の場合:上限5,000万円
  • 土砂災害(特別)警戒区域外の場合:上限1,200万円
神奈川県川崎市/宅地防災工事助成金制度
  • 工事費用の1/3
  • 上限300万円
群馬県高崎市/擁壁改修工事補助
  • 擁壁の除却及び築造工事に要する費用の1/2
  • 上限100万円

 

自治体によって適用条件や補助金額は異なりますが、上限額が大きい制度もあるため、擁壁のやり直し工事の費用負担を抑えられる可能性があります。

擁壁のある土地を検討する際は、自治体の補助金制度がないかチェックしてみましょう。

擁壁のある土地に家を建てるメリット

日当たりが良い擁壁のある土地

ここまで見てきたように、擁壁のある土地に家を建てることにはリスクやデメリットがありますが、メリットもあります。

日当たりや眺望が良い土地が多い

擁壁のある土地は傾斜地が多いため、日当たりや眺望が良い場所にマイホームを建てられるのが大きなメリットです。

傾斜地では周囲の家と高低差があるため日陰になりにくく、遠くまで見晴らしが良い土地を見つけられることも多いです。

相場より安く買えることが多い

前述したように擁壁のある土地にはいくつかのリスクがあるため、一般的な相場より安く買えることも多いです。

擁壁の状態を見極めてリスクを回避すれば、費用を抑えて理想的な土地を購入できる可能性もあります。

擁壁リスク軽減なら保証も検討

ここまで見てきたように、擁壁のある土地にマイホームを建てるのはリスクもあるため、万が一に備えて保証を活用するのも1つの考え方です。

 

クレバリーホームの擁壁保証

例えば、クレバリーホームでは地盤保証(オプション)の中の選べる追加保証として、擁壁を起因とした不同沈下に対する擁壁保証を用意しています。

万が一擁壁が原因で不同沈下が発生した場合、お引渡しから35年間、最大5,000万円を保証することが可能です。

地盤保証専門の会社で擁壁保証に加入することもできますが、クレバリーホームなら建物と擁壁の両方を1つの窓口でカバーできるのがメリットです。

地盤や擁壁のリスクを解析したうえで、問題があるときは補強工事や地盤改良工事を実施し、長期保証をご提供いたします。

クレバリーホームの全国のモデルハウスでは、土地選びに関するご相談も受け付けていますので、擁壁のある土地を検討の際はぜひお気軽にご来場ください。

▼クレバリーホームのモデルハウス一覧

この記事の関連記事を読む