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愛犬のお留守番、何時間まで大丈夫?

2019.4.26

愛犬と過ごす時間は、飼い主さんにとってかけがえのないもの。しかし24時間365日、ずっと一緒にいられるとは限りません。仕事や家事・育児で外出しなければならないときもありますよね。そんなとき気がかりなのが、「犬のお留守番問題」。万が一の事故やトラブルをなくすためにも、留守番中の時間を安心して過ごすポイントをご紹介します。

留守番中の食事・おやつ、トイレ、散歩は?
犬の不安やストレスを考えよう

仕事をしている飼い主さんの中には、日中はほぼ留守番をさせているという人も多いかもしれません。しかし犬は本来、群れで生活する動物です。誰もいない家で一人ぼっちで長時間過ごすのは、犬にとって寂しさや恐怖など精神的な負担も大きく、きっとたくさん我慢しているはず。しっかりと飼い主さんが対策してあげることが必要です。

留守番できる時間については、子犬時代の生活環境や性格、年齢などによって異なるため一概に何時間くらいが限界、とは言い切れません。一つの目安としては、排泄・食事などお世話の頻度。例えばおしっこの間隔は、子犬の場合は8~10週齢未満なら1時間ほど、3ヶ月なら3時間ほど、6ヶ月齢以上になると6時間以上空くといわれており、低週齢・低月齢な犬ほどお世話が頻繁に必要になるため、長時間留守にするのは難しいと言えるでしょう。

留守番中は、食事やおやつに自動給餌器を利用したり、こぼしづらいボトル式の水を用意したりする方も多いですが、誤飲誤食の原因になったり予想できないトラブルが起きることもあり、注意が必要です。

飼い主さんは、外出中の愛犬の問題行動に注意

外出先から帰宅すると、いつもしない場所で粗相をしている、家具を噛んだり引っ掻いたりしている、モノが散乱しているなど、留守中に愛犬がトラブルを起こしてしまうことがあります。これは愛犬が「分離不安症」に陥っているからかもしれません。

「分離不安症」とは、愛着のある人や場所から離れることで不安を感じること。精神障害のひとつで、飼い主さんの不在中に問題行動になって現れます。問題行動には次のようなものがあります。

■分離不安による犬の問題行動

・無駄吠え
吠える、くんくん鳴く、遠吠えするなど、飼い主さんの姿が見えなくなった直後から見られることの多い行動です。飼い主さんがいるときには無駄吠えをしないケースが多く、ご近所さんからの苦情で初めて気づくことも。

・破壊行動
ソファなどの家具を噛む・壊す、床を掘ろうとする、ドアや壁を引っ掻くなど。とくに出かける直前に飼い主さんが触ったものへの破壊行動が多いとされています。

・粗相
いつもはちゃんと決められた場所でトイレができるのに、リビングでうんちをしていたり、ソファやカーテンにおしっこをかけていたり……。時には糞食をしてしまうケースもあります。

・その他の症状
食欲不振・下痢・嘔吐などの胃腸症状、過剰なグルーミング、同じ場所をグルグル回るなど落ち着きのない行動などが挙げられます。

「分離不安症」の原因とは?なりやすい犬はいるの?
犬の不安やストレスを考えよう

飼い主と離れることで現れる分離不安症。しかしその原因はまだ明らかになっておらず、いくつかの仮説が提唱されているにすぎません。動物行動医学の分野でもまだ明らかな見解が示されていないようです。

■分離不安症の原因(仮説)

1. 過剰な愛着
愛犬は飼い主さんといるときに大きな安心感に包まれています。通常であれば離乳とともに安心感を求める気持ちが緩やかになっていきますが、完全に成長してからも飼い主さんへの愛着を持ち続け、強い依存心になってしまっている、という説です。

2. 留守番中などの恐怖体験
例えば一匹で過ごしているときに大きな雷鳴が続いたなど、過去の怖い体験が留守番中の恐怖を引き起こしている、という説です。

3. 感情的ホメオスタシス
飼い主さんがそばにいる状態がデフォルトになってしまい、飼い主さんが不在の状態に違和感を覚え、元の状態に戻そうとしているという説もあります。

4. 相反過程理論
なでられる、おやつをもらうなどの快感を日常的に繰り返し感じていることで、それが「ない」状態を不快に思い、飼い主さんの存在を熱烈に求めている、という説もあります。

性別、犬種などによって「分離不安症を起こしやすい犬」が存在する、という調査もありますが、これといった原因は明らかになっていないため、愛犬との日々の接し方や生活パターンからの影響が大きいとみられています。

分離不安症を治療する6つの方法

分離不安症による問題行動を減らすには、苦手な状態に少しずつ慣らすことと、苦手な状態を逆に嬉しい刺激に変換してしまうという2つのアプローチが有効だと言われています。分離不安症の治療法は留守番のしつけにもつながるため、ぜひ実践してみましょう。

1. リラックスシグナルで飼い主さん不在時の「安心」を確保

リラックスシグナルとは、愛犬が飼い主さんと一緒にいてリラックスした気分を、特定のものごとと関連づけて覚えさせる方法。飼い主さん不在のときにもリラックスした気分を思い出すことができ、愛犬の安心感につながります。

愛犬がリラックスした状態のときに、例えば飼い主さんが本を朗読する、飼い主さんの匂いがついた服を近くに置く、持続性のあるおもちゃを与える、など同じ刺激を繰り返し与えるうちに、飼い主さんの姿が見えなくても本を朗読する音声、匂いつきの服、おもちゃなどがあるだけでリラックスできるようになります。

2. フォーマットトレーニングで犬の依存心を軽減

フォーマットトレーニングとはアイコンタクト・オスワリ・マテのことを指し、犬と関わる "前"に、必ず行うべき行動です。犬が留守番中に無駄吠えをするのは、鳴いて飼い主を呼ぼうとするから。「鳴いても自分の願望は叶わない」という思考に切り替えるために、犬と接するときはこの行動を徹底しましょう。家族全員が同じルールで接することが大切です。

3. 寝床を分け、飼い主さんとの距離感を広げる
飼い主さんと愛犬が同じ布団で寝ることと、愛犬の飼い主さんへの愛着の度合いはさほど関係がないという報告もあります。しかし少しずつ距離感を広げて飼い主と離れている状態に慣れさせることが、留守番中の分離不安症を防ぐ上でも有効だと考えられます。突然別々の部屋にしてしまうとかえって不安感が増す可能性もあるため、少しずつ距離を広げていくとよいでしょう。

腰高の壁で人と犬のスペースを仕切る間取りにすれば、お互いの気配は感じられながらも、別々の生活をおくれるので「分離不安症」の対策にもなります。

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4. いろいろな音に慣らし、恐怖心を軽減

分離不安症になる犬は、怖がりや音に敏感な犬が多いというデータがあります。そうでなくても飼い主さん不在で不安な中、苦手な音が聞こえると怯えてしまい、より大きな精神的負担に。そうならないためにも、掃除機、インターホンのチャイム、雷鳴、花火、自動車、バイク、工事現場音、他の犬の鳴き声など、嫌がることの多い音に慣れさせておくと安心です。

5. 飼い主の不在に慣らして、平常心を養う
分離不安症の強い犬の場合、同じ家にいるのに飼い主さんの姿が見えなくなっただけでパニックを起こす犬もいます。この場合は、飼い主さんの姿が半分だけ見える状態で、オスワリ・マテを行い、待機時間を延ばす訓練を行いましょう。さらに完全に姿を隠して同じようにマテをさせ、数秒から数分、そして15分くらいまで時間を延ばします。

設定した時間をちゃんと静かに待てたらたくさん褒めてあげましょう。逆に途中で吠えたり動いたりしてしまった場合、その時点で姿を見せるのはNG。鳴き止んだタイミングで姿を現し、ノーリアクションでもう一度元の場所に誘導してオスワリ・マテを命じます。これを繰り返すことで、「飼い主さんの姿が見えなくなっても、ちゃんと待っていたら必ず帰ってきてくれる」と覚え、一定の時間が経過しても不安を感じにくくなるはずです。

6. 外出時のルーティンを崩し、不安になるプロセスを排除する。

飼い主さんがリードを手に取ると「散歩に行く」ことがわかりソワソワし始める犬も多いのではないでしょうか。これは、リードと散歩を結びつけて覚えているからです。飼い主さんが外出するときも、決まった行動をしているはず。それらの行動と外出を結びつけて記憶しているため、その行動をとった途端にパニックになり、問題行動を起こすようになります。

行動のルーティンを崩すために、例えば「鍵を持って、玄関に行かずにテーブルに置く」「上着を着て、そのままソファに座る」など、フェイクの行動をとるのがオススメ。特定の行動に対する不安な気持ちが起こりにくくなり、パニックを防止できます。

ケージ活用以外の、愛犬のための室内の"場所づくり"

留守中の問題行動以外に飼い主さんにとって気がかりなのは、愛犬が室内で安全に健康に過ごせるかどうか、という点ではないでしょうか。とくに真夏・真冬は留守中の室温や、万が一の事故なども心配です。そこで留守番に適した環境づくりのポイントをご紹介しましょう。

■安全を確保する

もっとも大切なのは、室内を安全な状態にしておくこと。イタズラや誤飲誤食につながるものを愛犬の届く場所に置かないように。家具などに引っかからないように愛犬の首輪を外しておくのも大切です。とはいえコンセントや家具家電など、すべてを排除しておくことは難しい……という方も多いはず。そんなときはサークルを活用したり、普段から犬との共用空間と人間専用空間をしっかり分けておく、という方法が有効です。

念入りに気を付けていても、人の生活するスペースには思いもよらない危険が潜んでいるもの。「お留守番の時はここにいてね」と定位置を作ってあげられると、犬も大人しくお留守番をしやすくなります。

いい子で待っていてね!お留守番の「定位置」づくり

■室温をコントロールする

室内の温度管理も重要なポイントです。犬が快適に過ごせると言われる室温は約22?25度、湿度は50%前後です。ストーブは転倒などによる事故・火災の危険性が。ホットカーペットや電気毛布などもコンセントをかじるなどの事故の可能性があるので、エアコンが安心です。寒い日はブランケットなどを用意しておくとよいでしょう。

ただし、エアコンの風が直撃するのもまた、犬が体調を崩す原因に。住まいの断熱性にこだわることで、外気温による室温への影響が少なくなります。愛犬の健康管理の面でも住宅性能を考えることは大切です。

エアコンを切ってもあたたかい!断熱性と換気システムで快適温度に

■その他の工夫

犬が退屈しないように持続性のあるおもちゃを用意しておくのもオススメです。犬の体の大きさ、年齢などに合わせて選びましょう。間違って飲み込んだり、首に絡まったりと、事故の危険があるようなおもちゃは避けておきましょう。

ひとりでお留守番している愛犬のために、見守り用のカメラを設置しておくのもオススメ。スマートフォンから外出先でも様子が見られるので、もしもの時も安心です。

お留守番中も様子を確認できる「見守りカメラ」って?

愛犬の留守番前後の注意点は

留守番中に愛犬ができるだけストレスなく過ごすための対策も考えておきましょう。留守番前には、お散歩に行っておくこと。運動したあとは自然と眠くなるため、留守中に問題行動が起きにくくなります。お散歩のあとにご飯をあげておけば眠気がいっそう増し、静かに過ごせます。逆に留守番直前におもちゃ遊びなどをすると体が興奮してしまうため避けるようにしましょう。

留守番後の接し方にもポイントがあります。1つ目のポイントは、再会した瞬間に犬が見せる問題行動に、ごほうびを与えないこと。吠えたり、飛びついたりなど喜びを全身で表現する様子につい飼い主さんの目尻も下がってしまいますが、そこで飼い主さんが喜んでしまうと問題行動を助長することになりかねません。興奮が静まるのを待ち、オスワリを指示してちゃんと待てたらほめてあげる、という方法が有効です。

もう1つは留守番中に問題行動を起こしていてもそれを罰しないことです。犬を叱る際には行動の直後でないと効果がありません。

長時間・長期間の外出時は、プロに預けると安心

長時間の留守番が不安なときはもちろん、宿泊を伴う出張や旅行などの際は、プロに預けることも検討しましょう。プロの手を借りる際には、自宅以外で面倒を見てもらう方法と、自宅でケアをしてもらう方法があります。いずれにしても、預け先ではケージやクレートなどに入って過ごすことが多いため、ハウストレーニングをしておくようにしましょう。

■犬の留守番を助けるサービスいろいろ

・ペットシッターサービス
留守宅に訪問して愛犬のお世話やお散歩代行などをしてくれる。環境の変化が苦手な愛犬にオススメ。

・犬の保育園・幼稚園
他の犬たちと一緒に過ごせるので、犬同士の遊びを通して活発に健康的に過ごせる。飼い主以外の人間に慣れたり、基本的なしつけを覚えられたりといったメリットが。

・ペットホテル
宿泊を伴う長期的な不在にも対応してくれるペットホテル。動物病院やペットサロンに併設されているケースもあり、サービス内容もさまざま。

■預ける際に用意しておきたいもの

・迷子札
・愛用しているグッズ(おもちゃやブランケットなど)
・かかりつけの動物病院の連絡先
・鑑札と狂犬病予防注射済票
・ワクチン接種証明書
・フード
・(必要な場合)薬

飼い主さんにとって大切な家族の一員である、愛犬。その愛犬にとって飼い主さんは「唯一無二」の存在であり、不在時の心細さ、寂しさ、不安を理解してあげることが重要です。飼い主さん不在時にしっかり備え、愛犬と飼い主さんがお互い心身健やかに過ごせるようにしたいものですね。

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