犬のための手作りごはんとは？

手作りごはんとは、愛犬の体調を管理しながら、食事の楽しみを感じてもらうために飼い主さんが作る犬ごはんのこと。実際に「愛犬のためにごはんを作ってあげたい」という飼い主さんも増えていて、レシピ本やレシピサイトなども充実してきています。手作りごはんにする上で大切なのは、愛犬の持病や体質、体調、食事への興味、食材の好き嫌い、年齢、運動量などをきちんと把握した上で行うこと。犬ごはんを手作りするメリットとデメリットをご紹介しましょう。

■手作りごはんのメリット

・食材から水分を摂取しやすい
犬の体の約60％は水で占められていて、水は生命を維持するために不可欠です。栄養素の運搬や老廃物を排出したり、消化・吸収を助けたり、体温を調節したりと、さまざまな形で水が使われています。ほとんど水分が摂取できないドライフードとは異なり、手作りごはんだと犬が食事から水分を摂取することができます。

・食材によっては生で食べられ、酵素を摂取できる

酵素は犬が生命を維持する上で、水や酸素と同じように重要な働きをします。酵素とは、食べ物の消化を助けたり、吸収された栄養を体の細胞に届けたりと、体を調整する働きをする大切な物質です。生の食べ物には酵素が含まれているため、犬の体調管理をサポートしてくれます。

・年齢や体調に合わせた食事ができる
例えば年齢を重ねて硬いドライフードが食べにくくなった、肉の種類によってはアレルギー反応が出てしまう、暑い日が続いて食欲が落ちている……など、愛犬の状況に合わせてアレンジできるのが手作りごはんのいいところ。旬の野菜を使ったり、栄養素にこだわった食材を入れたり、保存料を摂取せずに済んだり……。市販フードでは難しい細やかな調整ができます。

・レシピによっては人間と同じ食材を使える

アレンジによっては飼い主さん家族と同じ食材を使った犬ごはんも可能。家族の一員として同じ食材を楽しめるのは、喜びもひとしおです。

・飼い主さんの喜びにつながる
手間暇かけて作った犬ごはんを愛犬が美味しそうに食べてくれることは、飼い主さんにとってこの上ない喜びになるはず。手作りごはんで体調がよくなったり、食事への関心が高まったりと、お互いの絆を深めるいい機会になります。

■手作りごはんのデメリット

・栄養バランスを考える難しさ
愛犬のすべての食事を手作りごはんで賄う場合、栄養素のバランスや過不足などもしっかり考えておく必要があります。人間の栄養バランスと犬の栄養バランスは異なるので、どのような栄養素がどのくらいの分量必要なのか、基本的な知識を身につけておくとよいでしょう。

・持ち運びがしづらい
常温保存できる時間が限られるため、長期にわたる旅行などへの持参は難しいでしょう。またペットシッターさんやペットホテルに預ける際の食事の用意にも手間がかかるため、不便さを感じることがあるかもしれません。

・保存がきかない

ドライフードのように常温で長期間保存することができません。食材の新鮮さを楽しめるメリットがある反面、お留守番中などに置いておくと傷んでしまうリスクがあります。一度にまとめて作って冷凍保存しておくこともできますが、大型犬などの場合は食べる量が多く、冷凍庫のスペース問題なども考えておく必要があります。

・衛生面に配慮が必要
使ったお皿はすぐに洗ってあげたり、こぼれたご飯を片付けたりと、こまめな掃除が重要に。そのまま放置しておくとこぼした食材が傷んでしまい、愛犬の健康によくありません。

手作りごはんで飼い主さんが気をつけるべき「バランス」「栄養素」

手作りごはんを用意するときに注意したいのは、動物性タンパク質、炭水化物、野菜類のバランス。人間と犬は体の構造が基本的に異なるため、同じようなバランスで考えるのはNG。犬は肉食に近い雑食なので、炭水化物中心になりがちな人間よりも肉・魚・乳製品などの動物性タンパク質に重点を置いて考えるとよいでしょう。愛犬の健康状態や年齢などによっても必要な栄養素やバランスは異なるので、体調面の変化などに配慮しながら進めると安心です。排泄物の状態、毛ヅヤ、体重の変化、食欲などをチェックして、手作りごはんが愛犬に合っているかどうか日々観察を。

ただ、動物性タンパク質が大切だとはいえ、食材は肉や魚をたっぷり与えればよいというわけではありません。例えば肉には良質なタンパク質だけでなく脂肪もたっぷり含まれているので分量を飼い主さんがコントロールする必要があります。また、脂肪と同じ「油脂分」でも、摂取した方がよいものもあります。それは、体内で合成できない脂肪酸「オメガ３脂肪酸」。この「オメガ３脂肪酸」は人間だけでなく愛犬の食生活にも不足しがちな栄養素だと言われています。皮膚、体毛、心臓、血管、血液、脳、関節、眼などの健康維持に欠かせない栄養素で、がんの発生を抑制するとも言われています。これらは魚油や亜麻仁油などに含まれているので、少ない分量でも犬ごはんに加えてあげるとよいでしょう。

安全な犬ごはんに必要なのは、「食べたら危険」な食材を知ること

愛犬のための手作りごはんを用意する上でもっとも大切なのは、犬が食べていい食材・食べてはいけない食材をきちんと知っておくことです。人間にとって害のない食材であっても犬にとって悪影響を与えるものもあり、微量でも命に関わる可能性もあるため注意が必要です。

■食べてはいけない食材

この他にも、ジャガイモの芽、ニンニク、コーヒー・紅茶・緑茶などカフェインが含まれているもの、香辛料などは愛犬にはあげないようにしましょう。

■注意が必要な食材

・青魚
DHAやEPAなど犬の健康を維持する上で大切な栄養素を含む青魚。犬ごはんの食材として使う際には鮮度と火の通し方に注意が必要です。鮮度が落ちているとアレルギーを起こしやすくなりますし、生のままや火の通りがよくないと寄生虫や食中毒の心配も。また塩分の取りすぎや骨・ヒレにも飼い主さんが注意してあげましょう。

・生のタコ・イカ
加熱されているものであれば、犬ごはんの食材として使うのに問題はありませんが、生のタコ・イカは食中毒などの心配もあり、避けた方がよいでしょう。

・アボカド
「森のバター」と呼ばれる栄養の豊富なアボカドですが、犬にとってはリスクのある食材です。嘔吐・下痢・軟便、呼吸困難、けいれんなどの症状が出ることもあるので注意しましょう。

・パン
パン好きの飼い主さんに多いのが、愛犬にパンを与えてしまうこと。ですが、中に入っている食材によっては注意が必要です。例えば惣菜パンなどに含まれるネギ類、チョコレート、香辛料などは愛犬には危険。またバターの油脂分や塩分なども気になるところです。

その他の食べ物も、愛犬の体質によっては食物アレルギーを起こすこともあるので、初めての食材は少しずつあげるようにしましょう。発疹、脱毛、フケなど皮膚症状が出た場合は思い当たる食材を食べさせるのをやめ、しばらく様子を見るようにしましょう。

タンパク質？炭水化物？野菜？犬ごはんのおすすめフードは

愛犬のための手作りごはんの基本は、飼い主さんも愛犬も“無理をしない”こと。「毎日手作りでなければ」「栄養バランスを完璧にしなければ」「必要な分量を食べさせなくては」と気負いすぎるとお互いに負担になって楽しめなくなってしまいます。

バランスの基本は、動物性タンパク質・炭水化物・野菜（果物）を同じくらいの量ずつ、をベースに。それに、出汁や豆腐・ワカメ・サプリメントを加えるイメージです。

■犬ごはんのレシピに使いたい食材

・動物性タンパク質

• ・鶏肉
• ・豚肉
• ・牛肉
• ・馬肉
• ・ラム肉
• ・鹿肉
• ・レバー
• ・イワシ
• ・鮭
• ・タラ
• ・アジ
• ・サワラ
• ・煮干し、じゃこ　など

・炭水化物

• ・ごはん
• ・玄米ごはん
• ・うどん
• ・マカロニ
• ・パスタ　など

・野菜

• ・キャベツ
• ・人参
• ・ほうれん草
• ・ナス
• ・ブロッコリー
• ・トマト
• ・大根
• ・かぼちゃ
• ・オクラ
• ・りんご
• ・梨　　など

・プラスアルファ

• ・豆腐、油揚げ
• ・ゴマ
• ・ワカメ、ひじき
• ・納豆
• ・ゆで卵（生はNG）
• ・オリーブオイル
• ・サプリメント　など

初心者でも大丈夫！手作り犬ごはんレシピを知ろう

これまでご紹介した愛犬のための手作りごはんに使えない食材、使える食材を参考に、油分・塩分に気をつけて調理してみましょう。調味料で味付けはせず、食材の味を活かして調理するのがポイントです。もしかすると手作り犬ごはん初心者の飼い主さんは、「野菜はどのくらいの大きさに切ったらいいの？」「どのくらい柔らかく煮たら食べやすい？」「アレンジのバリエーションを知りたい」など、知りたいことがたくさんあるかもしれません。そんなときに頼りになるのが、犬ごはんのレシピを紹介しているサイト。フードアレルギーに配慮したレシピ、旬の野菜を取り入れられるレシピ、犬種に応じたレシピなど、知りたい情報に合わせて検索できて便利です。

■手作り犬ごはんのレシピ：参考サイト

・わんわんシェフ見習い中
https://wanchef.com/A/
日本最大級の犬の手作りごはん・おやつレシピの専門サイト。プロのレシピはもちろん、ユーザーによる投稿レシピも充実。

・クックパッド
https://cookpad.com/
言わずと知れた投稿型レシピサイト。「犬用」と検索すると、多種多様な犬ごはんレシピを閲覧することができます。

市販フードに簡単にプラス！“トッピング犬ごはん”

愛犬のために手作りごはんを毎食用意するのは、飼い主さんにとって手間と時間がかかるため、なかなかハードルが高いと思います。それに「自分が用意する手作りごはんだけで犬の健康管理ができるかどうか」も心配です。そこで初心者の方に最初におすすめしたいのが、ドライフード（ドッグフード）と手作りフードを組み合わせる、“トッピングごはん”。いつものフードに手作りご飯をちょい足しするだけで風味や食感に変化が出て、食への興味が増したり、摂取できる栄養素の幅が広がったりと、よい効果が得られるかもしれません。

もっとも簡単なのは、野菜など生で食べてよいものを細かく切り、ドッグフードに乗せる方法。野菜だけでなく、白身魚の刺身、豆腐などもあるとよいでしょう。もう少し手間をかけるなら、肉や魚、干し野菜からとった出汁をドライフードにかけてもいいですね。調味料を使わないことと、人肌に冷ますことを忘れずに。また、人間用の食事のとりわけで犬ごはんを用意することもできます。犬が食べてはいけない食材が入っていないことを確認してから、調味前のごはんを取り分けて食べさせましょう。

１日の食事、目安となる分量は？

１日に必要な手作りごはんの分量は、愛犬の年齢、犬種、運動量などによって変わります。目安としてご紹介するのは、上記でご紹介したレシピサイト「わんわんシェフ見習い中」で示されている、“愛犬の頭にぴったりの浅めの帽子に入るくらいの量（１日量）”。犬によって個体差があるので、体重の変化などに注意しながら、適正量を見極めていくようにしましょう。

愛犬の年齢に合わせて手作りごはんのアレンジを

シニア犬になると、運動量・筋肉量も落ちてきます。これまでと同じような手作りごはんのままでは太ってしまう可能性も。動物性タンパク質をより多く摂取できる食材の割合を増やすことが大切です。また腎臓の機能も低下するため、積極的に水分を摂ることも重要です。出汁などを活用して食事から水分を摂れるようにしておくと安心です。持病によって病院の処方食を食べている愛犬の場合は、まずは獣医師に相談を。

年齢による食欲低下が気になる場合は、食べやすいようにやわらかくしてみる、香りが立つように少し温める、いつもとは違うものトッピングしてみるなどの方法も有効です。